『歯科衛生士』は、むし歯や歯周病の予防を通して生活習慣病の予防や全身の健康づくりに貢献しています。そして、赤ちゃんから高齢者まで『食べる幸せ』を支援する歯科保健医療の担い手です。
編集協力/(公社)日本歯科衛生士会 http://www.jdha.or.jp/・(一財)歯科医療振興財団 http://www.dc-training.or.jp/
歯科医師の診療を補助するとともに
人々の歯・口腔の健康づくりをサポートする
歯科衛生士が日本に誕生して70年が経過しました。直近の歯科衛生士の就業者数は13万名を越し、日本はアメリカに次いで歯科衛生士が多い国となりました。この理由として、最近のたくさんの調査研究から、「口腔の健康が全身の健康と深い関係」があることが明らかとなり、お口の健康づくりを担う歯科衛生士の役割に対する社会の期待が大きくなったことが挙げられています。 歯科衛生士は、人々のお口の健康づくりで全身の健康をサポートする国家資格の専門職です。赤ちゃんから高齢者まで全ての人々の『食べる幸せ』を支援する歯科保健医療の担い手であり、生涯にわたって人々の役に立つことができる仕事です。歯科衛生士が行う業務は、法律で3つが定められており、それぞれに専門性の高い知識と技術が必要とされます。
歯科予防処置
歯を失う原因の90%が「むし歯」と「歯周病」です。この「むし歯」と「歯周病」を予防して歯の寿命を延伸することにより、「自分の歯で美味しく食べる」「楽しく会話する」など、健康でイキイキとした生活を送ることができます。「むし歯」の予防のためにフッ化物などの薬物を塗ったり、「歯周病」の予防のために、家庭でのプラークコントロールを支援したり、「歯周病」の原因となる歯石などを専門的な技術によって除去します。歯科衛生士は、このような歯科予防処置の専門家です。
歯科診療の補助
歯科診療は、歯科医師を中心とした「チーム医療」として行われます。その中で、歯科衛生士は歯科医師の診療を補助するとともに、歯科医師の指示を受けて歯科治療の一部を担当しています。近年、特に増加している業務は、「歯周病」の治療や重症化予防、検査やモニタリングなどの歯科臨床検査、歯科矯正・インプラント・口腔外科手術などの補助業務で、何れも高度な医療技術を必要としています。さらに歯科衛生士は、歯科医師の指示の下で、「歯周病」の治療をはじめ、摂食嚥下障害に対する「かむこと」や「飲み込む力」の訓練を行います。
歯科保健指導
「むし歯」や「歯周病」は生活習慣病であり、治療よりも予防が重要です。歯科衛生士は、人々が自らの生活習慣を改善して、よりよいセルフケアを実践するための専門的な支援を行います。歯科保健指導は、個人や集団を対象とした健康教育や健康相談、療養上の指導など、妊婦や乳幼児期から高齢期までの各々のライフステージにおいて行います。最近では、赤ちゃんから高齢者までの『食べる幸せ』を支援する歯科保健医療の担い手として、「かむこと」や「飲み込む力」を強くするための指導訓練も担当しています。
また歯科保健指導は、歯科診療所や病院だけではなく、保育所・幼稚園・学校、保健所・市町村保健センター、障がい者( 児) 施設、介護施設、居宅そして職場など地域の中で広く実施しています。このように、幅広い年齢層の人々や様々な生活環境に応じた歯科保健指導が重要であり、高いコミュニケーション能力が求められます。社会への期待に応えるために…
近年、高齢者の割合が増大する中、訪問診療や医科歯科連携など歯科衛生士に対する社会の期待が大きくなってきています。そこで日本歯科衛生士会では、学校教育に継続した「生涯研修」を実施しております。さらに生涯研修を一定単位取得した歯科衛生士は、多様化した社会ニーズに対応するための「認定研修」を受講できます。今後、社会からの期待に応えるためにも、認定研修を受講して歯科衛生士としての臨床実践力を高めることが極めて大切です。
歯科衛生士は、「歯科衛生士法」に基づいて認定される国家資格です。歯科衛生士養成校に入学し、歯科衛生士になるために必要な課程を修了し卒業しても資格そのものは取得できません。卒業することで得られるのは受験資格であり、その後、厚生労働大臣のもとに実施される国家試験を受けて合格し、免許を交付されたときにはじめて歯科衛生士として働くことができるのです。
歯科衛生士国家試験の受験資格は以下の通りです。
❶文部科学大臣の指定した歯科衛生士学校を卒業した者。
❷都道府県知事の指定した歯科衛生士養成所を卒業した者。
❸外国の歯科衛生士学校を卒業し、または外国において歯科衛生士免許を取得した者であって、厚生労働大臣が❶、❷に掲げる者と同等以上の知識および技能を有すると認めた者。
歯科衛生士国家試験は、年1回、北海道、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県の10カ所の試験地で実施されます。
試験科目は、以下の9科目です。
①人体(歯・口腔を除く)の構造と機能
②歯・口腔の構造と機能
③疾病の成り立ち及び回復過程の促進
④歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み
⑤歯科衛生士概論
⑥臨床歯科医学
⑦歯科予防処置論
⑧歯科保健指導論
⑨歯科診療補助論
平成30年度の歯科衛生士国家試験の受験者数は7,207人で、合格者数は6,934人、合格率は96.2%でした。
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