医師の指示のもと、視力や視野などさまざまな視機能を検査し、両眼視機能に障害のある人に対して回復のための矯正訓練を行い、正常な視機能へと導いていくのが『視能訓練士』の仕事です。
編集協力/(公社)日本視能訓練士協会 http://www.jaco.or.jp
医師の指示のもと、眼科検査や視能矯正訓練(視能訓練)を施す
検査・治療に直接関与するスペシャリスト
医療技術の驚異的な発達により、医療現場は多様化・複雑化し、より専門化してきました。これにともない医療体系も、従来の医師・看護師・薬剤師の3本柱に病院管理部門と医療専門技術者部門が加わり、医療技術の専門化・複雑化に対応しています。視能訓練士は、この医療専門技術者に属し、医師の指示のもとで検査・治療に直接関与するスペシャリストです。
視能訓練士の主な仕事は眼科一般検査、視能矯正、健診業務、ロービジョン者のリハビリ指導などに分けられます。
幼児、成人、老人などを対象に、視力、屈折、調節、視野、色覚、光覚、眼圧、眼位、輻湊、眼球運動、両眼視機能などの検査を行います。患者に必要な治療をするためには、個々の検査結果に基づき症状を正確に診断しなければなりません。眼科分野でのこれらの検査は医師、看護師のほかには、視能訓練士だけができるもので、検査結果に基づいて医師が治療内容を決めます。また、治療の途中でも経過観察のために何度か検査が行われます。
主として弱視、斜視患者に対して訓練を行います。弱視、斜視の中には、早期発見・早期治療により正常な視能が取り戻せる場合があります。視能訓練士は、医師の指示のもとに視能矯正訓練のプログラムを作成し、各種光学機器を使って正しい両眼視機能が得られるように訓練を行っていきます。また、日本が世界有数の長寿大国となった現在、視能矯正の対象は以前のように幼少児に限らず、高齢者に対しても必要となっています。病気によって視力や視野に障害のあるロービジョン患者に対して、保有している機能を有効に利用するためのリハビリ指導を行います。
視能訓練士は、眼科医療スタッフの一員として、医師や看護師その他周囲とのコミュニケーションを図りながら検査・訓練を行うため協調性が必要です。さらに重要なのは患者一人ひとりに対して深い理解と温かい心で接することです。また、ほかの医療職にもいえますが、心身ともに健全であること、常に専門知識や技術の向上に努めるのも大切なことです。
視能訓練士の仕事は人間の生活と深くかかわっているため、その果たす役割はたいへんに重要なものです。現場の仕事では、常に正確さと慎重さが要求されます。
視能訓練士は、医師の指示のもとでその業務を行う医療技術者であるため、就職先は、基本的には病院、診療所です。かつては設備の整った大都市の総合病院、大学病院など、大型病院に集中する傾向がありましたが、近年では、地方都市の地域に根ざした眼科病院・医院への就職も増加しています。また、視覚科学に関連した大学院博士課程や工学、心理学系などの大学院へ進学して、視能のさらなる研究を深める道を選択することも可能です。臨床の現場では、チーム医療の一員として、患者への共感性とともに他の医療スタッフとのコミュニケーションも大切となります。
国家試験合格者数は2019年3月31日現在16,199人ですが、最近は視能訓練士への高い需要から、年々増加傾向にあります。勤務条件は、各医療機関によって異なりますが、ほかの医療技術者とほぼ同じで、勤務時間は通常8時半から9時に始まりますが、終了時間は各施設の開院時間に応じた時間になります。看護師のように夜間勤務はなく、有資格者の男女比は1.6:8.4で女性が数多くいます。医療技術は常に進歩しており、次々に新しい検査機器が登場しています。また、地方の都市化現象の拡大により、専門眼科医療の必要性が高まり、全国各地で眼科医院の開設が増加しています。新しい技術にしっかりと対応できる人材が望まれるとともに、視能訓練士への需要がさらに高まっていくでしょう。
視能訓練士の資格を取得するには国家試験に合格しなければなりません。この国家試験の受験資格は養成施設で視能訓練士に必要な知識や技能を学ぶことによって得られます。ここでは国家試験の受験資格や養成施設の入学資格についてみていくことにしましょう。
以上のように視能訓練士国家試験の受験資格を得る方法はさまざまです。しかし、高等学校卒業後のルートでは、指定の養成施設に入学して、専門技術・知識を修得する❶がいちばんの近道といえるでしょう。
❷のルートの場合、一般の大学・短期大学において厚生労働大臣の指定する科目を修めていれば、必ずしも卒業しなくても視能訓練士養成施設に入学することはできます。なお、この場合は前述したように養成施設での修業期間が1年に短縮されます。
視能訓練士養成施設には、①大学(修業年限4年)、②3年制視能訓練士養成施設、③4年制視能訓練士養成施設、④1年制視能訓練士養成施設の4つがあります。①〜③の入学資格は、高等学校卒業者あるいは見込者、同等以上の学力のある者(高等学校卒業程度認定試験合格者)となっています。④は、高等学校卒業後に大学(短期大学を含む)または厚生労働省令で定める学校(看護師養成施設あるいは保育士養成施設)において2年以上修業し、厚生労働大臣が指定する科目を修めた者が対象となります。
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