言語聴覚士 めざせる学校を探す 資格の取得方法をみる

言語聴覚士とは…

言語聴覚のリハビリテーションを担う

言語(聞く・話す・読む・書く)は、人間にとって最も基本的なコミュニケーション手段です。その言語の機能に障害のある人を対象に、機能の獲得や回復、維持を図るのが『言語聴覚士』の仕事です。

仕事の内容

音声機能、言語機能、聴覚の機能回復を図るため、
検査を行い、医師の診断のもと、訓練、指導を行う

法律の条文によると、言語聴覚士は「言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行う」と定義されています。
言語聴覚士の仕事は、障害者の聴覚機能、音声、構音(発音)、言語などの状態が現在どのようになっているかを検査し明らかにすることから始まります。この検査結果に基づいて医師や歯科医師が診断を下し、治療方針を立てます。そして、医学的治療による機能の回復などが難しい場合には、リハビリテーションでの対応になり、言語聴覚士が訓練プランを立てます。その訓練には、機能回復を目的とするもの、補聴器などの補装具で能力を補うもの、絵カードなどの代用手段を用いるものなどがあります。さらに、家族などに患者のハンディキャップを軽減するための指導を行うことも大切な仕事です。なお、言語聴覚士が対象とする主な障害は次の通りです。

聴こえの障害(難聴)

聴こえの障害は大別すると、伝音系器官(外耳、中耳)の障害、感音系器官(内耳、聴神経など)の障害、その双方の混合障害があります。障害の程度に応じて、補聴器などの補装具で聴こえを補う方法や視覚を利用してコミュニケーションをとる方法があります。

言語発達の遅れ

言語発達の遅れとは、同年齢の子どもに比べて言語の理解や表現が遅れている状態のことです。理由としては、聴覚障害、対人関係の障害、知的障害、言語学習に限定された特異的な障害、脳損傷などがあります。その結果、言語を理解することが難しかったり、言い表すことが難しくなったりします。

音声や構音(発音)の障害

音声の障害は、喉や声帯の病変によるものや、声を使いすぎるなど誤った使い方をしたために起きるものがあります。症状としては、ガラガラ声、息もれのする声、弱い声などさまざまな異状が現れます。構音の障害は口腔器官の疾患などにより「ア」とか「カ」などの音をうまく発音することができないものです。

失語症

失語症は、脳卒中などの病気や事故などによる頭部外傷によって大脳にある言語中枢が損傷を受けたために、言語の操作が難しくなる障害です。症状としては、言葉を適切に話すことが難しい状態、言葉を聞いても理解することが難しい状態、文字や文章の読み書きが難しい状態、計算が難しい状態などがあります。

嚥下(えんげ)障害

嚥下とは食べたものを飲み込むことですが、神経の疾患や嚥下器官の形態的損傷などが原因になって、うまく飲み込めない障害が起こります。嚥下障害があると、食べることに支障があるだけでなく、食べ物が肺に入って肺炎を引き起こすなど命にかかわることさえあります。また、言語にも障害が現れることが少なくありません。

言語聴覚士は、上記のような障害についてさまざまな検査、訓練、指導を行うわけですが、直接人と向き合う仕事ですから、人と接するのが好きであることが重要な資質になります。また、すぐには結果が出ない場合が多いので、粘り強く患者に接していく姿勢も大切です。

現状と将来の展望

2018年時点で言語聴覚士ST(Speech-language-hearing Therapist)の有資格者数は31,233人。職場の大半は医療施設ですが、このほかにも福祉・介護分野、学校教育、言語聴覚士養成施設、研究機関などで活躍しています。リハビリテーション部門はもちろん、耳鼻咽喉科、小児科、口腔外科などでも言語聴覚士を採用するところが増えています。
福祉分野では、難聴幼児通園施設で配置が義務づけられています。これ以外に肢体不自由児施設などの各種施設でもSTが働いていますが、まだ数は少ないのが実情です。しかし、福祉の充実は急務であり、当然、リハビリテーションスタッフの果たす役割も増大しており、STも福祉分野での活躍が期待されています。また、今後は、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、保健所や保健センターなどの保健分野、特別支援教育などの教育分野での活躍機会も増えると予想されます。

資格の取得方法

言語聴覚士の養成施設には、大学、短期大学、専門学校などがあります。こうした養成施設で言語聴覚士に必要とされる知識や技術を学び、国家試験に合格することで、言語聴覚士の資格が取得できます。

国家試験の受験資格

言語聴覚士国家試験の受験資格は以下の通りです。

  1. ❶大学入学資格を有する者で、文部科学大臣が指定した学校、厚生労働大臣または都道府県知事が指定した言語聴覚士養成施設において3年以上、言語聴覚士として必要な知識および技能を修得した者。
  2. ❷大学、高等専門学校、養成施設などにおいて2年(高等専門学校は5年)以上修業し、厚生労働大臣の指定する科目を修めた者で、文部科学大臣が指定した学校、厚生労働大臣または都道府県知事が指定した言語聴覚士養成施設において1年以上、言語聴覚士として必要な知識および技能を修得した者。
  3. ❸大学、高等専門学校、養成施設などにおいて1年(高等専門学校は4年)以上修業し、厚生労働大臣の指定する科目を修めた者で、文部科学大臣が指定した学校、厚生労働大臣または都道府県知事が指定した言語聴覚士養成施設において2年以上、言語聴覚士として必要な知識および技能を修得した者。
  4. ❹大学(短期大学を除く)において厚生労働大臣が指定する科目を修めて卒業した者。
  5. ❺外国で言語訓練その他の訓練・検査・指導・助言に関する学校もしくは養成施設を卒業、または外国で言語聴覚士の免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が❶〜❺に掲げる者と同等以上の知識および技能を有すると認定した者。

国家試験

国家試験は年1回、北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県の6カ所の試験地で実施されます。試験科目は、以下の12科目です。
①基礎医学、②臨床医学、③臨床歯科医学、④音声・言語・聴覚医学、⑤心理学、⑥音声・言語学、⑦社会福祉・教育、⑧言語聴覚障害学総論、⑨失語・高次脳機能障害学、⑩言語発達障害学、⑪発声発語・嚥下障害学、⑫聴覚障害学。
平成30年度の国家試験の受験者数は2,367人、合格者数1,630人、合格率68.9%でした。

教育機関を選んでクリックしてください。(※別窓で一覧が表示されます)

大学   短期大学   専門学校ほか