医師の指示のもと、事故や病気などで失ったり、機能を失ったりした身体の一部を補う義肢装具を、製作・適合させるのが『義肢装具士』の仕事。
医学・工学など幅広い分野の専門知識と技術が要求されます。
編集協力/日本義肢装具士協会 http://www.japo.jp/
医師の指示のもと、義肢・装具の採型や製作を行い
患者の身体への適合を行う。キメ細かなアフターケアも重要な仕事
「義肢装具士法」によると、義肢装具士の仕事は「医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うこと」とあります。
通常、義肢装具士は、まず医師の依頼を受けて病院へと出向きます。その後医師から患者の症状や留意点などを聞き、採型が始まります。この際に直接、患者本人から義肢や装具に対する希望を聞くのも大切なことです。
もちろん、採型をしながら患者の相談に乗ることもあります。義肢装具士とは、知識や技術が優れているだけではいけません。親身になって患者と接しなければ、患者は心を開いてくれないものです。患者の本音を聞くことができなければ、よいものはできません。
採型の後は製作所に戻って製作になります。作業はほとんどが手作業です。ここで、できあがった義肢や装具を患者に装着してもらい、装着具合を確かめます。これが「仮合わせ」です。適合の具合がよくなければ修正を行い、完成品へと近づけていきます。
完成したものは患者に装着し、医師による最終チェックを受けます。装着後も必要に応じて調整や修理を行わなければなりません。キメ細かなアフターケアも重要な仕事です。義肢や装具の製作にあたっては、装着する人の身になってあらゆる配慮がなされなければなりません。それを必要とする人に満足してもらえる義肢や装具を供給するには地道な努力と高度な専門的知識と技術が求められます。
人間にとって、本来あるべき機能が失われることほど悲しいことはありません。本人にとっては肉体的にも精神的にもたいへんに苦しい状態なのです。義肢や装具の採型や適合を行うとき、義肢装具士は患者に最も近い存在となります。このとき大切なのは、こうした心の痛みを十分理解し、一緒になって努力する心を持って患者に接することです。何らかの原因で身体の機能の一部を失った人々は、義肢や装具を装着することで、社会復帰への足がかりを得ることはできます。しかし、物理的な面だけでなく、精神的にも社会復帰しなければ、本当の意味での社会復帰とはいえないのです。健康な人にとっては何でもないことが、患者を深く傷つけることもあります。義肢装具士には、そんな患者の立場に立ってともに社会復帰をめざす姿勢が求められます。これは、義肢装具士だけでなく、医療系の仕事に携わるすべての人にいえることです。
医師や理学療法士などとともに、ときにはきびしく、ときには優しく、思いやりを持って患者と接し、一日も早い社会復帰を促すのが、リハビリテーション医療の一翼を担う義肢装具士の責務なのです。
義肢装具士の活躍の場は、現在のところ、民間の義肢装具製作所が主流となっています。
しかし、義肢装具士の仕事は、良質な義肢や装具の製作だけでなく、一人ひとりにフィットさせ、それを使用することで、日常生活ができるだけ不自由なく送れるようにすることにあります。こうした目的を達成するには、患者との緊密なコミュニケーションや、医師との打ち合わせが必要になるため、病院や診療所、リハビリテーション施設へと活躍の場も広がってきています。
さらに、昨今の医療技術の発達には目をみはるものがあり、義肢や装具にも改良が加えられています。こうした研究・開発分野への参加も想定できます。
また、これまで青年海外協力隊員として発展途上国に赴いたり、NGOの国際援助活動で義肢装具製作などの支援活動に携わったりする義肢装具士もいます。
義肢装具士になるためには、養成施設において専門的な知識や技術を修得した後、国家試験に合格しなければなりません。「義肢装具士法」に定められた国家試験の受験資格は以下の通りです。
受験資格は❶〜❹のいずれかの方法で取得できますが、現在は❶または❹の方法のみとなっています。
義肢装具士の国家試験は、毎年1回、厚生労働大臣により実施されています。
試験の科目は次の6科目です。
ちなみに平成30年度の国家試験の合格率は89.4%。いずれの試験科目も養成施設でしっかり学ぶことで、国家試験合格が果たせるようカリキュラムが組まれています。
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