医学や医療技術は近年著しく進歩し、医療保険制度も充実してきました。これにともない、国民医療費や年間患者数も増加の一途。さらに、 医療施設においては管理運営面の高度化・複雑化が進み、コンピュータによるシステム化が盛んに行われています。特に事務部門は老人医療、 公害医療、乳幼児医療費助成制度など、医療福祉の充実や医療法の整備・改正にともない、システム化がかなり進んでいます。また、患者数の増加により、レセプト(診療報酬請求明細書)作成業務も煩雑になるばかりです。
このように日常の仕事が増える一方で、看護師不足などが問題になっており、医師や看護師が、このような煩雑な業務に対応することは困難になっています。
こうしたことから、現在では高度な事務処理能力と医学の基礎知識を併せ持った医療事務や情報管理のスペシャリストを配置する病院も少なくありません。
さらに、既成の東洋医学、西洋医学の壁を取り払った新しい医療分野体系や、社会福祉と医療の両面を持つ分野も誕生し、今後も医療現場の多様化・複雑化はますます進んでいくでしょう。
病院や医療機関の事務を担い運営管理業務をスピーディにこなす
医師と患者・医療スタッフ間の調整役も果たす
病院や医療機関において窓口受付業務や入退院、治療、検査、投薬などに関する簿記会計、帳票処理業務、医療保険請求業務を行うのが医療事務スタッフです。
医療保険請求業務は、保険の点数計算やレセプト(診療報酬請求明細書)作成といった実務能力が必要です。最近はこれらの情報をコンピュータで管理する病院も少なくありません。 また受付は「病院の顔」であるため、来院者に不快感や不信感を持たれないよう、態度や言葉遣いに十分注意しなければなりません。
病院長、事務長、医師、看護師長などのもとで、あるいは大学医学部などの研究機関で、医療知識を備えた秘書として活躍するのが医療秘書です。具体的には、 病院内外に対しての電話や文書による通信連絡業務、医師会へ提出する文書の作成、スケジュール管理、病棟事務などがありますが、仕事のパートナーとなる人の立場や仕事内容によって業務は異なります。
このような仕事をこなしていくためには、医学・医療に関する知識だけでなく、簿記や秘書業務全般についての技能も必要です。 また、患者と接する機会が多いため、思いやりや温かな心遣いも忘れてはいけません。
病院内において患者、医師、看護師、事務部門間の連絡調整にあたるのが病棟・外来クラークです。
病棟・外来クラークの職場は病棟と外来に分かれます。病棟では、医師や看護師、見舞い客などと患者のコーディネートを、外来では、診断や治療に訪れる患者と医療スタッフをコーディネートします。 業務内容は多岐にわたるため、看護知識や医療知識、医療事務、医療心理など、幅広い知識が求められます。
病院の運営・管理に携わるのが、病院管理スタッフです。具体的には、病院経営をサポートしたり、文書の管理、薬品や医療機器の購入計画、給食管理、設備管理、安全管理、人事管理などを担当します。
病院管理スタッフとして働くには、医療知識のほかに、事務管理能力も必要です。病院といえども1つの企業と捉え、総合的な目で病院の質的管理を把握し、スピーディに業務を遂行する能力が求められます。 さらにコスト意識を持って病院全体を見渡せる目も必要です。
病院などの医療機関において各種情報を管理したり、患者の診療情報を正確に記録・保存する業務に携わっているのが医療情報管理スタッフ、診療情報管理スタッフです。医療情報管理スタッフは、 医療現場の情報処理や医療マネジメントに必要なシステム環境を整える専門家。医療に関する知識、情報技術に加えて、病院経営・組織運営といった知識も求められます。一方の診療情報管理スタッフは、患者一人ひとりの診療情報を正確にデータ化し、管理・保存する専門家。診療記録として記載されている内容を正確に電子カルテとして記録・保存・管理していきます。どちらも質の高い医療サービスの提供、必要に応じた情報公開、医療事故を未然に防ぐために欠かせないスタッフです。
生命に直接関わらなくても、
医師や医療スタッフをサポートする大切な役割を果たす
歯科医療がスムーズに行われるように、歯科衛生士と協力しながら、歯科医師をサポートするのが歯科助手です。歯科医師が診療をするとき、チェアサイドに立ってミラーやピンセットを手渡したり、注射器の準備と手渡し、レントゲン撮影の準備などを行います。このほか機器の洗浄・消毒、トレイセッティング、薬類の補充、レセプト作成、受付業務、 カルテ管理なども大切な仕事です。歯科医療が高度化している現在、歯科医師を支える総合マネージャー的な存在といえるでしょう。
ドラッグストアや病院の薬局、調剤薬局の受付で患者やお客さまに対応するのが調剤薬局スタッフ。薬事関連の規定や医薬品の基礎知識に加え、会計・事務能力が求められる仕事です。関連する資格に登録販売者があります。この資格は薬事法改正に伴い2008年度に誕生した新資格。医薬品の店舗販売において、 指定医薬品を除く一般医薬品(第二類・第三類医薬品)を販売する際に必要な資格です。薬業系の学校で関連知識が学べます。
カイロプラクティックは東洋のヨーガ、呼吸法、空手道場活法の技術を取り入れた整体療法。人体を構造学的および精神学的に捉え、背骨に最も重点を置いた予防・治療法で、 この施術者がカイロプラクターです。薬害のない利点もあって、欧米では国民医療として定着。また、腰痛はもちろん、 不眠症、肩こり、神経痛、むち打ち症などの根治治療法としても高い効果を上げています。