学校教育法で、幼稚園は「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする」と位置づけられています。その幼稚園で、子どもたちの就学前教育を担い、心身の発達をうながすのが幼稚園教諭です。
幼稚園は任意の教育機関ですが、子どもたちが小学校以降の義務教育にスムーズに適応していくうえで欠かせない役割を担っています。就園率を見ても、2019年5月時点で、3〜5歳児全体で42.6%となっています。幼稚園以外にも認定こども園(後述)、保育所があり、就学前教育を受ける子どもたちがほぼ100%近くになっており、就学前教育の広範さ、大切さを物語っています。
幼稚園は、3年保育の場合は3歳児から5歳児が対象、2年保育の場合は4歳児と5歳児が対象になり、現在は3年保育が主流です。教育内容は、文部科学省の幼稚園教育要領で示されている「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域で構成されます。この5領域にかかわる活動や遊びなどを通して子どもたちの発達をうながし、社会性や自主性なども身につくようにしていきます。
認定こども園は、教育と保育を一体的に提供する施設で、4つの類型がありますが、どの類型でも幼稚園としての機能は従来の幼稚園と同じです。
幼稚園教諭の主な仕事は、誰もが知っている「幼稚園の先生」です。
幼稚園教諭は通常、年少・年中・年長と分かれた3学年(3年保育の場合)のうち、いずれかの学年の1クラスを担任します。
保育は、年間計画を作成するところから始まります。これは各種の行事などを織り込みながら、1年間で子どもたちをどのように育てていくかを決めるものです。その年間計画に基づいて、1か月ごとの月案、さらに1週間ごとの週案などを立案し、子どもたちの様子も見ながら計画を柔軟に調整して保育を進めていきます。
実際には月単位で活動内容が変わるわけではなく、行事に向けて活動をしていくことが多くなっています。たとえば、節分の豆まきのために鬼の面を制作する計画を立て、紙の折り方、色の塗り方、ハサミやノリの使い方などを教えていくというかたちです。また、運動会や発表会など大きな行事に向けては、早い段階から計画を立て、準備を進めていきます。といっても、いきなり練習をするのではなく、遊び、音楽、絵本など子どもたちが興味を持つものから入り、楽しみながら練習につなげていくことが大切です。
日々の保育は、4時間ぐらいが標準で、午前9時頃から午後1時半頃までというところが多くなっています。現在は通常保育が終わったあとに子どもたちを預かる「預かり保育」を行うところも増えています。
幼稚園教諭は、朝9時頃から登園してくる子どもたちを迎え入れます。しばらく遊びの時間を取ったあとで「朝の会」を開き、出席をとり、その日の活動について話をします。10時半か11時頃から「主活動」の時間になり、制作、リズム遊び、音楽、運動などさまざまな活動をします。そのあとは昼食。昼食後は少し遊びの時間を設けて、1時過ぎぐらいから「お帰りの会」を開き、翌日の予定などを伝え、子どもたちの降園を見守ります。
通常の保育はそこまでですが、仕事は続きます。記録の記入、担任同士の打ち合わせ、翌日や行事に向けた準備、園内の環境整備などを行って1日の業務を終えます。
学校教育や大学入試など教育全体が大きく変わるなかで、生涯教育のスタート部分を担う幼稚園教諭の役割はさらに重要になっています。2006年から設置されている認定こども園が2019年4月時点で7208施設にまで増えるなど活躍の場も広がっています。この認定こども園のうち幼保連携型は、2015年度から、職員は幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を持つ「保育教諭」と位置づけられました。ただ、特例制度で2019年度まではどちらかの免許・資格があれば保育教諭として勤務することができ、その特例は2024年度まで5年間延長される方向になりました。その後は両方の免許・資格が必須になります。
教諭の免許状には、①普通免許状、②特別免許状、③臨時免許状があり、幼稚園教諭の場合は①と③の免許状があります。
普通免許状は、専修免許状、一種免許状、二種免許状の3種類があります(高等学校教諭は専修と一種)。臨時免許状は、助教諭の免許状で、普通免許状を持つ人を採用できない場合に限り、教育職員検定(通常は書類審査)に合格した者に交付されます。
普通免許状の種類ごとに取得方法をみると、以下のようになっています(概略)。
一種、二種は、上級の免許状をめざすことができ、所定の実務経験と指定科目の単位修得を経て教育職員検定に合格することで取得できます。臨時免許状も同様の過程を経て二種免許状を取得できます。
保育士として働いている人が幼稚園教諭の免許状を取得するための制度も設けられています。
1つは幼稚園教員資格認定試験制度。保育士として3年以上従事した者(ほかの条件も設定)を対象に2005年度から実施していて、二種免許状が取得できます。
もう1つは特例制度です。認定こども園のうち幼保連携型は2015年度から、職員は幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を持つ「保育教諭」と位置づけられ、2020年度からは両方の免許・資格が必須とされました。そのため、2019年度末まで保育士が幼稚園教諭免許状を取得する特例制度が設けられました。対象者は保育士として「3年以上、勤務時間合計が4320時間以上」の実務経験を有する者。大学で指定の8単位を修得したうえで教育職員検定に合格すれば、「学士の学位と保育士資格」を有する者は一種免許状、「保育士」の資格を有する者は二種免許状を取得できます。そして、この特例制度は、2024年度末まで5年間延長することになりました。
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