精神科ソーシャルワーカーという専門職をベースにして登場した『精神保健福祉士』は、精神障害者が抱えるさまざまな問題の解決をめざして、保健・医療・福祉の幅広い領域で活躍しています。
編集協力/(社)日本精神保健福祉士協会 http://www.japsw.or.jp/
精神に障害を持つ人が、その人らしいライフスタイルで
生きていくための、さまざまな相談援助業務を行う
精神保健福祉士の仕事を法律から読み取ると、精神障害者の「社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うこと」になります。といっても、狭い意味の「社会復帰」だけにかかわるということではなく、精神保健福祉士はきわめて幅の広い活動をしています。精神に障害を持つ人やメンタルヘルスに問題を抱える人が、その人らしいライフスタイルで生きていけることをめざして、さまざまな相談援助業務を行うのが精神保健福祉士の役割です。
また、精神保健福祉士は活躍している職場も多岐にわたります。主な職場としては、①精神科病院、②総合病院の精神科、③精神科診療所、④保健所、⑤精神保健福祉センター、⑥障害福祉サービス事業所、⑦市町村、⑧その他(地域活動支援センターなど)があります。そして、仕事内容はこうした職場ごとに少しずつ異なります。
医療機関での仕事は、相談室などでの相談活動が中心になります。まず受診前に、病気かどうか、受診したほうがよいか判断しかねている患者や家族の相談に応じ、医療の受け方や医療サービスの内容などを説明します。受診する場合も、最初は精神保健福祉士が相談室で受理面接をすることが多く、本人や家族の不安を和らげながら、生活環境や心理的・社会的な問題を把握し、受診へとつなげていきます。入院中には、患者と医師・看護職などとの調整、患者同士の人間関係の調整、家族との関係調整、経済的問題への対応、人権擁護などの役割を果たします。退院に向けては、生活環境の整備、障害福祉サービスなどの紹介、日常生活の訓練、関係機関との調整などを行います。さらに退院後も、地域の中で安定して生活していけるように、関係機関とも連携しながら、必要に応じて支援をしていきます。
また、精神科デイケアは、通院している患者の医療的リハビリテーションを担います。精神保健福祉士は、グループ活動による機能回復、利用者の生活全般にわたる相談援助などの仕事に携わります。
障害者総合支援法の下で、精神障害者の地域生活支援などの福祉サービスは、身体・知的障害と共通の枠組みにより提供されています。現在の体系では、就労移行支援・就労継続支援や地域活動支援センターなどの“日中の活動の場”と、グループホームなどの“住まいの場”を組み合わせて、その人のニーズに合ったサービスを提供します。相談支援専門員としてさまざまな相談を受けサービス利用計画を立てたり、入院中の精神障害者の地域移行の支援や地域定着を支援したりする相談支援事業所のほか、精神障害者を主たる対象とする事業所などでは、精神保健福祉士が中心となって、地域社会の中でその人らしい社会参加や社会復帰の実現に向けたさまざまな支援活動、必要な情報提供などを行います。
保健所は、地域住民の精神の健康に関する第一線機関です。仕事内容はさまざまですが、相談および指導面では、本人や家族からの相談を受け、早く医療機関につないだほうがいいのか、訪問しながら様子をみたほうがいいのかなどの判断や適切な支援をします。また、デイケアの運営、精神保健に関する普及啓発活動、家族会の支援なども行います。精神保健福祉センターの場合は、相談および指導のうち複雑・困難なものに対応するとともに、精神保健福祉に関する調査・普及活動や、保健所などに対する技術的支援や教育研修なども行います。
2019年度は22回目の国家試験となり有資格者は8万6,000人をすでに超えていますが、すべての人が精神保健福祉分野に従事しているわけではないこともあり、需要に追いつけない状況が続いています。
「精神保健福祉士法」によって、精神保健福祉士の役割として精神障害者の地域生活支援に関する相談を担うことが明確化されています。
将来的にも、精神保健福祉士の役割はますます大きなものになっていくはずです。
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