社会福祉主事は、「福祉六法」と呼ばれる「生活保護法」、「児童福祉法」、「母子及び寡婦福祉法」、「老人福祉法」、「身体障害者福祉法」、「知的障害者福祉法」に基づき、各行政機関において、さまざまな保護や援助を必要とする人々の相談、指導、援助にあたります。
実際に、社会福祉主事はどんな仕事をしているのでしょう。ここでは最もポピュラーな公的機関である福祉事務所で働く社会福祉主事の場合をみてみましょう。
福祉事務所に勤務する社会福祉主事は、一般にケースワーカーと呼ばれ、1人平均70〜80世帯の生活保護世帯を受け持っています。原則として、直接面接に来てもらうため、事務所では、常に来所者の対応に追われています。たとえば「生活保護の申請をしたい」という連絡が入ると、その地域の担当者は家庭に出向いて現状を調査。事務所に帰ってからもさまざまな事情を調べ、生活保護の要件に当てはまる場合は、書類を作成し、起案します。
書類に記入をすればそれで仕事が終わるわけではありません。生活保護を受けている家庭を訪問し、話し相手になったり、生活上の相談はもちろん、精神面の悩みなどの相談に乗ったりすることも大切な仕事となっています。
ほかの資格とは、ちょっと性格の異なる
『任用資格』って、なに?
現在、社会福祉関連の仕事は、社会福祉主事のような任用資格、社会福祉士や介護福祉士といった国家資格、さらには無資格でも就ける職種が混在しています。また、各資格が体系化されてから日が浅いため、資格を持たないまま、福祉関連職に就いている人も少なくありません。このような中で、社会福祉主事は行政における社会福祉の推進役として、各行政機関で活躍しています。しかし、社会福祉主事は、任用資格であるゆえの大きな問題も抱えています。それは、行政関係職種に就かなければ資格の効力を発しないということです。いくら福祉に関する知識や情熱を持っていても、公務員試験の壁にはばまれるといった事態も起こりうるのです。では、この「任用資格」とは一体どういうものなのでしょうか。
「任用資格」とは、公務員として公的機関に勤め、各資格と関連の深い部署に配属されて、はじめてその効力が発揮される資格を指します。つまり、福祉系の大学・短期大学や指定養成施設において、資格取得に必要な科目を履修し、卒業したとしても、一般企業に就職した場合は、たとえ資格関連部署に配属されても、有資格者として働くことはできないのです。
現在、福祉関連の任用資格には、社会福祉主事のほか児童福祉司、児童指導員、母子支援員、児童の遊びを指導する者などがあり、社会福祉事務所や児童相談所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、母子生活支援施設などが活躍の場となっています。
なお、任用資格には、一般に資格取得を証明する合格証書のようなものはなく、大学や短期大学、専門学校の卒業証明書や成績証明書で指定科目が履修されているかなどの必要条件が確認されます。
以上のように、社会福祉主事は他の福祉系資格である社会福祉士や介護福祉士などとその性質が大きく異なります。この点をしっかりと認識しておきましょう。
社会福祉主事の資格を取得する方法は、❶学校教育法に基づいた大学、短期大学において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業する、❷厚生労働大臣の指定する社会福祉主事養成施設(専門学校など)において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業する、❸厚生労働大臣が指定する講習会を受講する、などがあります。このうち❸は、現在、社会福祉関連の資格を持たずに福祉職員として働いている人が対象で、一般への公開はされていません。したがって、❶と❷のルートが一般的といえるでしょう。
大学、短期大学、専門学校で履修しなければならない厚生労働大臣の指定科目は心理学、社会学、経済学、社会福祉概論など全部で34科目。このうち3科目以上を履修し卒業すれば、資格要件が満たされます。ただし、社会福祉主事は「任用資格」なので、大学や短期大学、専門学校で定められた科目を履修して卒業した後に、「公務員採用試験」に合格することが必要です。
▼教育機関を選んでクリックしてください。(※別窓で一覧が表示されます)
大学 短期大学 専門学校ほか